内定式のない日に考える、"一括採用"を内側から変えているのは誰か

採用

10月1日は、多くの大手企業で内定式が行われるタイミングです。私たちジェネロは通年採用を行っているため、この日に合わせた内定式というものがありません。この違いについて考えているうちに、組織づくりのヒントになる、ある変化に気づきました。

制度が変わる前に、現場がすでに変わっている

新卒一括採用のスケジュールは、かつて経団連が定めた指針によって統一されていました。このルールは2018年に廃止が決まり、2021年卒以降は政府の"要請"という、拘束力の弱い形に移行しています。

ところが、実際の採用現場を見ると、制度上の解禁日を待たずに内々定を出す企業が年々増えており、大学4年生の5月時点ですでに半数以上が内定を得ている、という調査結果もあります。つまり、制度がルールを緩めるよりも先に、現場の実態がすでにルールを追い越している状態です。

この動きを後押ししているのは、人手不足という企業側の事情だけではないと感じています。もう一つ大きいのは、働く側の価値観そのものが変わってきていることです。

「みんなで足並みを揃える」ことへの、静かな距離感

今の若い世代の就職活動を見ていると、決められた時期に、決められた形式で、一斉に選考を受けるというスタイルよりも、自分に合ったタイミングで、自分に合った会社と、個別に向き合いたいという感覚が強くなっているように思います。

インターンシップを通じて早くから特定の会社と関係を築いたり、就職エージェントを介して自分のペースで複数社と並行して話を進めたり。一括りの儀式に合わせるのではなく、自分自身の意思決定として就職先を選び取りたいという姿勢です。

これは、企業への忠誠心が薄れたということではなく、画一的なプロセスよりも、個別最適化されたプロセスの方が、納得感を持てるという、ごく自然な価値観の変化だと捉えています。

この変化は、AI-Native経営の方向性と重なる

先日参加したSAFe AI Summitでも、AIと向き合う上で重要なのは、決められた作業を効率よくこなす「左脳的」な発想だけでなく、一人ひとりの創造性や直感を活かす「右脳的」な発想だ、という話がありました。

一括採用というモデルは、まさに「左脳的」に最適化された仕組みです。大量の候補者を、同じ基準で、同じタイミングで処理する。効率という意味では優れていますが、一人ひとりの個別性を活かす発想とは、方向性が異なります。

今、現場の実態や若い世代の価値観が変えつつあるのは、まさにこの部分です。組織づくりにおいても、すべてを画一的なプロセスで処理しようとするのではなく、個々の状況に応じて柔軟に対応できる設計が、これからますます求められていくはずです。

経営者として、意識しておきたいこと

一括採用が抱えてきた「フェアな競争環境をつくる」という役割自体は、今も一定の意味を持っています。ただ、その運用の中身は、制度の建前が変わるよりも先に、現場の実態と価値観によって、すでに変わり始めています。

経営者として大切なのは、この変化に抵抗するのでも、ただ流されるのでもなく、自社にとって、どこまで個別最適化し、どこまで一律の仕組みを残すのが適切かを、自分たちの言葉で設計し直すことだと思います。

まとめ

内定式が行われない一日だからこそ、一括採用という仕組みが、制度の建前より先に、現場の実態と若い世代の価値観によって内側から変わりつつあることに気づかされました。この動きをどう受け止め、自社の組織設計にどう活かすか。それこそが、これからの経営に問われている視点だと感じています。