日本の現場に根付いた「カイゼン」の文化は、顧客に求められるプロダクトをつくる力の土台になります。2026年10月6日に大阪で開かれたThis Week in Startups Live! Osakaで、米国のエンジェル投資家Jason Calacanis氏は、日本の職人気質やプロ意識をスタートアップの強みとして評価していました。一方で、日本の課題としてはスピードと率直さが挙げられていました。
AIによって少人数のチームでもプロダクトを短期間で形にできるようになった今、この話は中堅製造業をはじめとする日本企業にもそのまま当てはまると感じました。この記事では、当日語られた内容と、そこから考えたことを順にお話ししたいと思います。
This Week in Startups Live! Osakaとは
This Week in Startups(TWiST)は、米国のエンジェル投資家Jason Calacanis氏がホストを務める、スタートアップ業界のポッドキャストです。今回はその公開収録が、JETRO(日本貿易振興機構)とLAUNCHの共催により、2026年10月6日に大阪・梅田スカイビルで行われました。
ホストはJason Calacanis氏と、Techstars Japanの白戸勇輝氏。ネットワーキングに続いて公開収録が行われ、スタートアップによるピッチやQ&Aが行われました。
Jason Calacanis氏は、日本の仕事文化をどう評価したか
Jason氏は何度も日本を訪れているそうで、飲食店で職人の仕事ぶりを見るのが好きだと話していました。細部へのこだわり、毎回少しずつ良くしていく姿勢、そしてプロ意識。それはまさに「カイゼン」であり、顧客に本当に求められるプロダクトをつくる力(PMF:プロダクト・マーケット・フィット)の土台になる、というのが氏の見立てでした。
海外の投資家が、日本の現場に根付いている文化を「スタートアップの強み」として評価している。これは、私にとって新鮮な視点でした。
日本の課題として挙げられたこと
一方で、強みと表裏一体の課題も語られていました。
スピード:リスクを避ける傾向
日本では大企業志向やリスクを避ける傾向がまだ強いことが指摘されていました。品質を追求する力はある。そのうえで、もっと速く動けるかどうかが問われています。
率直さ:遠慮せずに意見を言い合えるか
ピッチへのフィードバックの場面でも、遠慮せずに率直に意見を言い合える場づくりが大切だと強調されていたのが印象的です。良いものをより良くするには、率直なフィードバックが欠かせません。
AIの時代に、プロダクトのつくり方はどう変わったか
イベントでは、Jason氏がJETROと共に日本で展開している起業家育成プログラム「Founder University Japan」の背景も紹介されていました。AIの普及によって、法人化もしていない2〜3人のチームが短期間でプロダクトを完成させる例が増えているそうです。
後半は、Techstars Japanの採択企業などによるピッチでした。半導体の初期設計をAIとの対話で大幅に短縮するもの、マンガ・アニメの制作工程をAIで効率化するものなど、これまで多くの時間や人手がかかっていた工程を根本から変えようとする提案が続きました。
日本企業、特に中堅製造業にとって何を意味するか
この話を聞きながら思い浮かべていたのは、私たちが日々ご一緒している日本企業、特に中堅製造業の現場です。
細部へのこだわりや継続的な改善は、多くの日本企業の現場にすでにある強みです。AIを取り入れることは、その強みを捨てることではありません。むしろ、カイゼンの文化にAIのスピードを掛け合わせることで、強みはさらに大きく育つのではないかと思っています。
よくある質問
This Week in Startups Live! Osakaとは何ですか?
Jason Calacanis氏がホストを務めるポッドキャスト「This Week in Startups」の公開収録イベントです。2026年10月6日に、JETROとLAUNCHの共催で大阪・梅田スカイビルで開催されました。
Jason Calacanis氏は、日本の強みをどう評価していましたか?
細部へのこだわり、継続的な改善(カイゼン)、プロ意識といった日本の仕事文化を、顧客に求められるプロダクトをつくる力(PMF)の土台になる強みとして評価していました。
日本企業はAI時代に、どのような強みを生かせますか?
現場に根付いたカイゼンの文化と、品質へのこだわりです。そこにAIによるスピードを掛け合わせることで、強みをさらに伸ばせると考えています。
まとめ
This Week in Startups Live! Osakaで感じたのは、日本の現場が当たり前のように持っているカイゼンの文化が、世界から見ると大きな強みだということです。足りないのはスピードと率直さ。そしてAIは、そのスピードを補う力になります。
今回、スタートアップの世界に身を置いてみて、普段向き合っているエンタープライズの世界とは、時間の流れ方がまったく違うと感じました。両方の世界を見ているからこそ、伝えられることがあるはずです。
ジェネロでは、日本企業がこれまで培ってきた強みを生かしながら、AIを業務に組み込んでいくお手伝いをしています。現場で受け取った刺激を、日本企業の変革を支える力に変えていきたいと思います。