ディープテックが社会に価値をもたらすのは、技術そのものが優れているときではなく、企業の現場の業務に組み込まれ、使い続けられるようになったときです。2026年10月に大阪で開かれたGlobal Startup EXPO 2026では、国内外の約150社のスタートアップが6つの分野で展示を行い、研究段階の技術が事業として形になり始めている様子を実感しました。AIガバナンスの議論では、管理の対象が「AIモデル」から「自ら判断し実行するAIエージェント」へ移りつつあることも語られていました。
私は10月6日・7日の2日間、うめきたの会場に参加してきました。この記事では、会場で見たもの、セッションで語られた3つの視点、そしてそれが日本企業の現場にとって何を意味するかを、順にお話ししたいと思います。
Global Startup EXPO 2026とは
Global Startup EXPO 2026(GSE2026)は、大阪府や経済産業省などが主催する、ディープテック分野の国際イベントです。2026年10月5日から7日までの3日間、大阪の中之島エリアとうめきたエリア(グランフロント大阪など)で開かれました。今年のテーマは「ディープテックを、世界と共に、産業へ。」です。
重点分野は、バイオ・ヘルスケア、AI・先端ロボット、フュージョンエネルギー、量子、半導体・通信、宇宙の6つ。国内外の約150社のスタートアップが出展し、基調講演やセッション、ピッチコンテスト、ビジネスマッチングが行われました。
会場で何を感じたか
会場を回りながら強く感じたのは、少し前まで研究室や論文の中にあった技術が、具体的なプロダクトや事業として形になり始めているということです。自動で歯を磨くロボットのように、実機を置いて動きを見せているブースもあり、技術が暮らしの中に入ってくる姿を具体的に想像できて、とても面白く感じました。
「遠い未来の話」だと思っていたテクノロジーが、社会への実装に向けて着実に進んでいる。その手触りを感じられた2日間でした。
セッションでは何が語られたか
セッションでは、立場の異なる方々の話を聞くことができました。大きく分けると、政策、投資、ガバナンスの3つの視点です。
政策の視点:世界で戦える企業をどう生み出すか
国のスタートアップ政策についての講演では、ここ数年で国内のスタートアップの数は大きく増えた一方、世界で戦える企業をどう生み出すかが次の課題だと語られていました。
投資家の視点:もっと速く、率直に、自信を持って
海外の投資家からは、日本の技術や品質は世界で通用するのだから、もっと速く、もっと率直に、自信を持って打ち出していい、というメッセージがありました。
ガバナンスの視点:AIモデルからAIエージェントへ
「Trust as Infrastructure」と題したパネルでは、EU AI法への対応を踏まえ、管理の対象が「AIモデル」から「自ら判断し実行するAIエージェント」へ移りつつあることが議論されていました。
AIエージェントの時代に、ガバナンスはどう変わるか
パネルの中で特に印象に残ったポイントは、次の3つです。
1. 部門横断で評価する
AIのユースケースは、1つの部門だけでは評価しきれません。法務、IT、事業部門をまたいだガバナンスの体制が必要になります。
2. 「やるべきこと」を明確に伝える
AIエージェントには、禁止事項を並べるより、何をすべきかを明確に伝えることが大切だという指摘がありました。
3. 稼働中も継続して監視する
導入前のチェックだけでは足りず、動いている間も継続してモニタリングする仕組みが欠かせません。
「信頼こそがインフラである」というセッションタイトルのとおり、AIを本格的に業務へ広げるには、信頼の設計が前提になると改めて感じました。
技術を企業の現場に届けるには、何が必要か
立場はそれぞれ違っても、どのセッションにも共通していたのは、技術そのものの優秀さより「それをどう社会や産業につなぐか」という問いだったように思います。
これは、私たちが日々お客様と向き合っている課題とも重なります。AIでもディープテックでも、技術は現場の業務に組み込まれ、組織の中で使い続けられて初めて価値になります。そして使い続けるには、ガバナンスと、それを支える組織の側の変化が欠かせません。
最先端の技術を無理に取り入れる必要はありません。これまでの記事(中堅製造業にとっての"AI-Native"は、今のやり方の延長線上にある)でも書いてあったように、今ある業務や強みの延長線上に、新しい技術をどう組み込むかを考えることが出発点になります。
よくある質問
Global Startup EXPO 2026は、いつ、どこで開催されましたか?
2026年10月5日から7日まで、大阪の中之島エリアとうめきたエリア(グランフロント大阪など)で開催されました。主催は大阪府や経済産業省などです。
どのような分野のスタートアップが出展していましたか?
バイオ・ヘルスケア、AI・先端ロボット、フュージョンエネルギー、量子、半導体・通信、宇宙の6分野を中心に、国内外の約150社が出展していました。
AIエージェントのガバナンスでは、何が重要だと語られていましたか?
部門をまたいだ評価体制をつくること、エージェントに「やるべきこと」を明確に伝えること、稼働中も継続して監視することの3点が挙げられていました。
まとめ
Global Startup EXPO 2026で感じたのは、ディープテックが研究の段階から事業の段階へと着実に進んでいること、そして技術を社会や産業につなぐことが、あらゆる立場に共通する課題になっていることです。AIエージェントの時代には、技術を使い続けるための信頼とガバナンスの設計が、ますます重要になっていきます。
ジェネロでは、AIを日々の業務に組み込み、ガバナンスのもとで使い続けられる仕組みづくりをお手伝いしています。会場で受け取った熱量を、お客様の現場に届く形に変えていけるよう、これからも取り組んでいきたいと思います。