事業を引き継いだ経営者の多くが、共通してぶつかる壁があります。それは、先代が長年の経験から培ってきた「勘」や「感覚」を、どう受け継げばよいのかという問いです。
「なぜこの取引先には、この納期で提案するのか」「なぜこの原料の仕入先を変えないのか」ー先代にとっては当たり前の判断でも、後継者にとっては理由がわからないまま引き継がれることが少なくありません。
「勘」は、実は言語化できることが多い
「勘」という言葉を使うと、まるで説明不可能なものに聞こえます。しかし実際には、その多くは長年の経験から積み上がった、暗黙のルールの集合体です。
たとえば「この取引先には多めに在庫を持つ」という判断の裏には、「過去に急な追加発注が何度もあった」という経験が隠れています。理由を丁寧に聞いていくと、勘のように見えていたものが、実は言語化できる判断基準だったというケースは少なくありません。
資産に変えるための、いくつかの問いかけ
「なぜ、そう判断したのですか」を繰り返し聞く
一度の説明では出てこなかった理由が、繰り返し聞くことで少しずつ言葉になっていきます。
一度の説明では出てこなかった理由が、繰り返し聞くことで少しずつ言葉になっていきます。
「もし違う判断をしていたら、何が起きていましたか」を聞く
リスクの感覚は、成功例よりも失敗を避けてきた経験の中に多く眠っています。
リスクの感覚は、成功例よりも失敗を避けてきた経験の中に多く眠っています。
日常の判断に、後継者が同席する
一つひとつの取引や現場対応に立ち会うことで、マニュアルには書かれない「間合い」のようなものが伝わっていきます。
一つひとつの取引や現場対応に立ち会うことで、マニュアルには書かれない「間合い」のようなものが伝わっていきます。
焦って全部を引き継ごうとしない
先代の経験は、一度にすべてを言語化しきれるものではありません。焦って完璧なマニュアルを作ろうとするより、日常のやり取りの中で少しずつ理由を尋ねていく積み重ねの方が、結果として多くの判断基準を引き継げる傾向があります。
先代にとっても、「自分の経験が次の世代に活かされている」という実感は、引き継ぎへの前向きな協力を引き出しやすくします。
まとめ
先代の勘や経験は、説明できないものではなく、まだ言葉になっていないだけの資産です。
日々の対話を通じて少しずつ言語化していくことが、組織全体の判断力を底上げする、確かな一歩になります。