「この仕事は、あの人にしかできない」
中堅製造業であれば、一度はこの言葉を口にしたことがあるはずです。長年の経験を積んだベテラン社員がいることは、会社にとって大きな財産です。同時に、その人がいなければ現場が止まってしまう状態は、会社の成長にとって静かなリスクにもなり得ます。
これは特定の誰かの問題ではなく、事業が成長する過程で自然に起きることです。まずは「属人化している仕事は何か」を丁寧に洗い出すところから始めてみましょう。
棚卸しの3つの視点
技術的に難しいのか、それとも単に「教える機会がなかった」だけなのか。原因を分けて考えると、対応の仕方が見えてきます。
毎日発生する仕事なのか、年に数回のイレギュラー対応なのか。頻度によって、標準化の優先順位が変わります。
一人が休んでも他の誰かがカバーできるのか、それとも取引先や生産ライン全体に影響が及ぶのか。
この3つの視点で棚卸しをすると、「今すぐ手をつけるべき仕事」と「当面は現状のままでよい仕事」が自然に分かれてきます。
すべてをマニュアル化する必要はない
属人化への対応というと、「すべてを分厚いマニュアルに落とし込む」ことを想像しがちですが、実際にはそこまでの労力は必要ないケースがほとんどです。
多くの会社でうまくいっているのは、「判断のポイントだけを言語化する」というアプローチです。作業の手順すべてではなく、「ここで何を確認しているか」「なぜこの選択をしているか」という、ベテランの頭の中にある判断基準を短く書き出すだけでも、引き継ぎの負担は大きく変わります。
棚卸しを進める会社に共通すること
属人化の解消がうまく進んでいる会社には、共通点があります。ベテラン社員に「マニュアルを作ってください」と丸投げするのではなく、若手や他部署のメンバーが質問しながら聞き取り、それを言語化するという進め方をしていることです。
ベテラン自身にとっては当たり前すぎて言語化しにくいことも、外から質問されることで初めて「そういえば、ここは確認している」と気づくことがよくあります。
まとめ
属人化は、特定の誰かの責任ではなく、会社が積み重ねてきた経験そのものです。その経験を、これからは組織全体の資産として引き継いでいくー まずは小さな棚卸しから始めてみてはいかがでしょうか。